Blue in the dark

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 暗闇に浮かぶ地球は、ぼんやりと輝いていた。少し赤味がかり、望みなど一筋も持てないほど疲れ切っている。 ユウリは地球に向かう宇宙船の窓から、哀れなその姿をただ見つめていた。 幼い日に母親が買ってくれた絵本で見た青い美しい輝きは、どこにも残っていない。まるで清らかな星々の狭間に浮かぶ、地獄のようだ。 地球がどうしてこんな姿になってしまったのか、誰も推測でしか語ることはできない。 おそらく地球を汚染した当の本人たち…いや、国ぐるみかもしれない…何かの団体…。事情を明確に語れるであろう人や物が全部ひっくるめて全滅してしまったのだ。  12年前ユウリは、青い地球に暮らすただの平凡な学生だった。嫌いな勉強をし、友人とふざけ合い、同じクラスに気になる女の子もいた。 普通…、その時はそれが当たり前だと信じていた。 だが、ある日を境に、信じられない勢いで人々は次々と死んでいった。 どこからも人間がいなくなり、両親は眠ったまま死んだ。 草木は枯れ果て、動物も、昆虫でさえ見なくなった。 取るべき行動もわからないまま、地球は過疎化し、情報すら忽然と消えた。 かろうじて生き延びた者の中に大人はいなかったのだ。 子供が集まって、まだ幼い頭で推測をし合った。 人工衛星上にある太陽光発電所が故障して地球を攻撃した、ナノウイルスの暴走、巨大隕石の落下、宇宙の起源を研究する施設が爆発したという噂も聞いた。それらが全部複合して起きた為に壊滅したのだと言った者もいた。 どの理由も全部想像の産物でしかないのだ。 だが、時間が経つにつれ、そういう噂話をする相手も次々と消えた。 子供たちは、病死したり、火星から来た探査ロボットに連れ去られたりした。 数か月が経つと、話し相手は隣に住んでいた9歳のリサだけになった。 そして、アンドロイドのアキと…。 アキは近くの修理工場に預けられていた労働用アンドロイドで、唯一手つかずのまま、メモリーリセットもされずに放置された状態になっていた。最初、街を徘徊している姿を見た時は普通に20歳くらいの人間に見えたほど、人と変わらなかった。
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