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ぱんぱんと膝を払って立ち上がり、
踵を返す
「ちょっ……とあんた、どこに行くのよ」
「帰ります」
「えっ、かか帰るの」
「はい。ご指示通りに出直して参ります」
また雷鳴が轟き、辺りが不自然に光った
「ひいー! としひらさまああ」
「お鈴様はどうぞ、
引き続きお励み下さいませ。
首尾よく逝けますことを
この綾子も願うております。
ではまた、来世で」
雨が降ると
いっぺんに暗くなるから困るけれど、
今ならまだなんとか道が見えるわ
「待ちなさいよ、止めなさいよ、
冷たい女ねっ!
ねえちょっと、待ってってば、
ひとりにしないで!」
お城はもう、
騒ぎになっている頃だろうかーー
それを思うとひどく気が重い
監視の目が強くなったら、
もう自死の機会は無いかもしれない
その時はまた、
別の方法を考えなくては。……
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