あなたが恋に落ちるまで

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あなたが恋に落ちるまで

◇◇◇◇◇ スマートフォンのアラームがいつも以上に煩わしい。 昨日の合コンで無理に飲んだアルコールがまだ残っているのか、ベッドから起き上がるのが億劫だった。さすがに飲みすぎてしまった。 昨夜は中田さんや椎名さんとのことを考えてしまい、お酒が入っているのになかなか寝つけなかった。今まで仕事以外で男性とまともに話したことがない私には難易度が高すぎた。あんなことで一々落ち込んでしまうなんて、この先恋人ができて結婚して……そんなことができるのだろうかと不安になる。 今日は土曜だけど月一回の出勤当番日だ。他の社員はほとんど休みの人が多いはず。 多分今日は私だって仕事に身が入らないだろうな……。 洗面台の棚を開けるとワンデーのコンタクトレンズがあと4日分しかなかった。買いに行くのを忘れていた。今日はメガネで行こうかな。 顔を上げて鏡に写る自分の顔を正面から見た。鏡には黒縁メガネでボサボサ頭の女がいる。不細工で、暗い、地味な女が……。 私は再び棚を開けてコンタクトレンズを取った。やっと気持ちに余裕が出てお洒落も楽しめるようになってきたのだ。土曜日だからと油断して地味な私を見せてはいけない。 古明橋にオフィスを構える株式会社早峰フーズに勤めて3年になる。 最終学歴が高卒の私が契約社員とはいえ大手に就職できたことは奇跡だ。今のところ大きな問題もなく契約を更新してもらえている。 総務部のフロアに入ると誰も来ていないようで暗かった。只でさえ日当たりの悪いフロアが余計に暗くジメジメとしているようだ。 「おはようございます」 突然入り口から聞こえた声に振り返ると一人の男性が立っていた。
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