10 統合

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「人ができることには、限界があります。あなたは、ただ人なんですから」  そうして。  その看護師は、カートを押して病室を出て行った。  千華子は、何も言えず、その後ろ姿を見送った。  もしかしたら。  彼女も、宝達と同じ立場にいる人達なのかもしれなかった。  千華子が思っている以上に、「彼」に関しては、警戒がされているのかもしれない。 「大事を取って、入院するってことになったらしいのよ」  三十分経って、千華子を病室まで迎えに来た母は、病院近くの喫茶店に千華子を誘った。  それから、いつまで入院しているのか、と尋ねた千華子に、そう教えてくれた。 「それって、珍しいことなの?」 「切迫流産なんかは手術が必要になるから入院することもあるけど、あの子は自然流産だからね……多分、心の方に負担が行っているんだと思うわ」
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