13日目⑤

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建物の中へ入ると内装も全て石を掘りこんだものだと胡桃は気付く。壁と天井に彫られた彫刻は、転職神殿の風景だった。 戦士が神殿へ進み姫巫女の力で魔法使いへ変わる姿が描かれている。魔法使いは魔物と戦い更なる高みへ目指し、新たな職業を自ら選んでいく。 転職とは、己れの可能性を導く異能であり神の御技である。 「転職とは天職であり、神より導かれ与えられた最も相応しい職業であり、神の御技である。姫巫女様は、最古のエルフで在りながら神の頂きへたどり着いた方であり、亜神種である。種族最高ランクのエルダー種の更に上だ。」 「旦那が、何故ドヤ顔か意味不明。後、そういう旦那も神の1人じゃないっすか」 「まあな。正確には半神で亜神のちょっと下のランクだ。神の御技もぶっ壊すか生やす程度の力しか出ないから」 「壊す専門家の旦那にぴったりの能力ですね!」 「自分もそう思った!」 「姫巫女様が何故ここに居られるかの説明より、昔話のほうが先かな。話しが繋がらないからな」 「黒龍が疲労で倒れて眠り、蜥蜴達が仕事を終えても目覚めない黒龍。蜥蜴達は遥か格上の黒龍を見て思った。もし黒龍が目覚めたら自分達は元の蜥蜴に戻されるのではないか... と。 竜と呼べる巨体と属性を操る力、叡知と強大な力。これらを全て失い只の蜥蜴に戻されるのではないかと。 白龍の眷族は肉体の一部から作られたからこそ消滅しなかったが自分達は? 黒龍はそこまで冷酷ではないというのに悪い方に考え続けた結果、黒龍を殺そうと決めた。 しかし、七匹の竜と黒龍との間には越える事が困難な程の壁が幾つもあったが、その壁を強制的に越える力を与えた者達がいた。 それが後の世に現れる災害の元凶である、『禍津神』達だ。 蜥蜴達の前に、三柱の禍津神が現れ、蜥蜴達を竜をベースとして更なる力を授けた。俺が戦い倒した『邪炎竜』も、三柱の力で強化されていたからな。 邪竜達は黒龍の肉体を七分割し、肉体の一部を己れの体内へ隠した。黒龍の魂は禍津神によって堕(お)とされ大地に作ったダンジョンへ封印された。 ダンジョンの魔物へと変貌させられた黒龍だったものは、ダンジョン内で生死を繰り返し魂を消耗させ消滅させられる筈だった。 私が現れるまでは。倒れても復活する魔物を倒さず、魂を封印した核を奪い、強制的に無力化する人など想定外だろう」
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