Share 12 駅のホームで

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見上げた先に、「仕方ないな」といった呆れた目があった。 だけど拓海くんの顔が優しいから、私は泣いてしまいそうになる。 「そりゃ俺を好きになってほしいけど、こればっかりはどうしようもねーって、俺だってわかってるよ。 もう困らすようなこと言わねーから、そんな顔すんな」 拓海くんはぽんぽんと頭を撫でてくれる。 「ごめ……ごめんね拓海く……」 「だからもう謝るな! わかったから!」 私の涙声をかき消すように、拓海くんが私の頭をぐしゃぐしゃにする。 「もう行こうぜ!コンビニ寄らなきゃいけないし。 ったく、母さんはいつも人づかいが荒いんだよ」 拓海くんは椅子から立ち上がり、私を促した。 「ほら、澪も早く。 ってか、絶対泣くなよ。 俺は澪を泣かせたくないんだよ」 怒ったように言う拓海くんに、私は鼻をすすりながら頷いた。 「ありがとう、拓海くん」 「おー。澪、絶対後悔するからな」 そう言った拓海くんに、私は小さく笑い返した。
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