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それは私にとって、あまり振り返りたくない思い出だった。
今、お色直しをしている筈の新婦は、私から新郎を奪っておいて、こんな端っこの席に追いやった。
正直、屈辱の以外に思い浮かぶ言葉はない。今この瞬間も、メラメラと胸の内で、青い炎が燃えている。
「あのう…」
「…ねぇ」
「聞いてる?」
私は、ハッとした。「あ、ごめん」
キョウコと、コウイチが、二人してこっちを覗き込んでいた。
「私、キョウコ」
「あ、俺…コウイチ」
「…えと、カナです」
「なんか、怖い顔してたよ」
「あは…何でもない」
こうして、私達3人は、結婚披露宴という、日常とはかけ離れた異空間で、意気投合した。
私たち三人は共通点が多かった。
同じ年齢とか、職場までの地下鉄の路線が同じとか、故郷が近いとか…他にもいろいろあった。
式の終盤になって、お酒の量も増えてくると、新郎新婦などそっちのけで、話は盛り上がり、当然二次会も参加した。
ビンゴゲームで、私がデジカメを当てたことで、更に盛り上がった。
二次会以降も、帰るのが未練がましく、静かな場所を選んで、3人だけで飲んだ。
小さなバーだった。
別れ際に、「また…3人で会わないか」のコウイチのセリフに、私とキョウコは待っていたかのように頷いた。
「じゃあ、写真を現像して持ってくるよ」
私が言うと、「閲覧会を開こう」と、キョウコが言った。
私達は夏休み前の子供のように、ワクワクしていた。
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