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頭のどこかではもう分かっていたのだと思う。
何食わぬ顔で視線を逸らせば、それで逃げられたのかもしれない。
でも私は確かめずにはいられなかった。
彼の胸元に下がっていた視線を、おずおずと顔に戻した。
メタルフレームの眼鏡の奥の冷徹な視線とぶつかった時、全身がヒヤリとした後、燃えるように熱くなった。
ベッドで目覚めた時に見た寝顔の、端正な目鼻立ち。
あの顔に眼鏡をかけたら……。
「あ……」
思わず小さく声を漏らしてしまい、手で口を覆った。
じっと私を捕らえている切れ長の目が微かに表情を変えたかと思うと、視線はすっと私を通りすぎていった。
ほんの数秒。
でもそれは強烈なストロボのように、私に鮮明な残像を残した。
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