第3章

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「これ飲んで良いわよ」 ありがとうございます、と頭を下げて差し出されたお茶を一口飲む。 程良い温かさが心地良い。 「さっきの質問ね、拓三さんはここに来て三日後にはありがとうございました、と言って帰っていったわ。けど丁度その一年後ぐらいに、タクシー運転手になって突然現れたのよ。あなたみたいな人を連れてね」 懐かしそうに語っていた店長さんはそこで少し目を閉じた。 「拓三さんはね、自分の変わった姿を私の母に見せに来たのよ。けれどその時には私の母は死んでいてね」 店長さんの言葉の途中でトイレの扉が開き、運転手さんがゆっくりと出てきた。 店長さんは運転手さんに体を向ける。 「もう一本食べる? タダで食べさせてあげるわよ?」 「いりません。それよりお母様に挨拶してもいいですか?」 「……ええ。母も喜ぶわ」 運転手さんは一人、部屋の奥の見えないところに進んでいく。 今、あの人はどんな気持ちでいるのだろうか。どんな顔をしているのだろうか。 「多分ね、拓三さん。私の母が好きだったのよ。そして今も憧れ続けている」 店長さんは団子を二つ一気に頬張った。 そして喉に詰まらせて咳き込み、お茶をぐっと飲み込む。 「私も若くないわね」 店長さんはまた隠し笑いをした。
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