第1章

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午後3時。 お気に入りのカップ&ソーサーに紅茶を淹れる。 淡いピンク色の花柄模様が描かれた、金色の縁の綺麗なティーカップ。 そこに、お気に入りのダージリンティーを注ぐ。 午前中のうちに丁寧に掃除をして空気を入れ替えた部屋に ダージリンの香りが上品に漂う。 カップからユラユラと白い蒸気が上がるのが見える。 大好きなケーキ屋さんの これまた 大好きなクッキーを添えて。 静かな1人きりの至福のおやつタイムを過ごす。 「あぁ~この瞬間が1番幸せ」 紅茶を一口飲んで、上品にソーサーにカップを戻し その手は、お気に入りのクッキーが入った綺麗にラッピングされた小包に伸びる。 大好きだから 思わず口角がいつもより上がる。 あのサクッとした感触と香ばしいバターの香り、 他のケーキ屋さんとは一味も二味も違うあの味を思えば、 口角が自然に上がってしまう。 幸せなおやつタイムを過ごしてるのは、 春木広菜26歳。 妊娠9ヶ月。 あと1wで臨月。 「紅茶は1日1杯にするから許してね」 クッキーを持った手と反対の手で そっとお腹をなでた。
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