12人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
1
ゴールデンウィーク明けの放課後、僕は違うクラスの女子に呼び止められた。何かな、と思う。顔は知っているけど、名前までは知らない。
「何?」
「速水くんってさ、彼女居る?」
「居ない」
「やった! じゃあ、私と付き合ってよ」
唐突に僕は告白された。同級生でごちゃごちゃした廊下の真ん中で、顔しか知らない女子に。はきはきとその子は僕に要求する。困ったな。完全に周りの同級生が何事かと僕達の事を遠巻きに見ている。こんな人の多い廊下で告白するなんて、何を考えているんだ。
「ごめんね。僕、名前も知らないのに付き合うとか出来ないから」
僕がそう言うとその女子は一瞬にして怒った顔になった。
「何よそれ! 歩み寄る気もない! 酷いよね!」
一方的に僕は罵倒される。酷いのかな。普通だと思うけど。それよりも、僕はこんな人の多い廊下でいきなり告白なんかする方の神経を疑う。
「別にそれでもいいよ。じゃあ、僕、行くから」
最初のコメントを投稿しよう!