いわれのない夕焼け

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いわれのない夕焼け

 ふと、気付いたら僕はその場所に居た。  いつから居たのか、いつその場所に来たのか、辿ってみても記憶は曖昧だ。  夕暮れの神社の境内。鬱蒼と茂る木々は夕日に影を色濃く落としている。人気はなく、陰鬱とした雰囲気だ。かすかな風が木の葉を揺らす音しかない。静かで、現実離れした場所であった。  どうして自分がそんな場所に居るのだろうと考え、気味が悪いとすら思える夕暮れの神社の境内を僕は離れようと思った。その時に、ふと誰かの声がした様な気がした。女の子のか細い声。人気は全く無いはずなのに、おかしいな、と僕は辺りを見回した。  相変わらず風に木の葉が揺れるだけで、人影は見当たらない。耳を澄ませてみると、しかし、やっぱりか細い女の子の声が聞こえる。何を言っているのかまでは聞き取れないけれど、確かに女の子の声は聞き間違いではない。  境内のどこかに女の子が居るのだろうか、と僕は辺りを見回しながらそっと拝殿に沿って奥へと足を進めた。普段、拝殿の奥へ行くことなどないから、罰が当たりそうな気がしてしまうのはどうしてだろう。
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