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「おーい常陸ぃ。もう話しかけても大丈夫かぁ?」
かなり離れた位置から、様子を窺うようにかけられた声。
はっ! そうだ、武田!
さっきのアレ、どこから見られてたんだ?
「たけっ……おま、お前っ……」
「常陸、大丈夫だ。心配すんな。俺は、こういうの慣れてる。だから気にすんな。つか、結局泊めてもらって悪かった」
ぎゃあぁ! 何、ソレ!
何、そのドヤ顔!
手のひらをこっちに向けて、うんうん頷いてみせたりとかすんなよ!
つか、『こういうの慣れてる』とか、それこそ何っ?
「あのさぁ。俺、もう帰るからさ。髪のスタイリング剤、貸してくんない?」
「あ、あぁ。その奥だ」
武田が流してくれてるなら、いいか。
ちょっとモヤッっとするけど、智穂に迷惑がかからないなら、いいことにすっか!
「おう、悪いな。けど、常陸なら色んな種類のを持ってると思ってさ」
「まぁな。職業柄、髪や肌の手入れは抜かりなくやってるよ。
ほら、この辺のが髪用のものだ」
「おぉ、さすがモデル。何種類持ってんだぁ?」
洗面所の横に設置した俺専用の可動式の棚。
そこに並べたヘアケア用品を見せると、すごい食いつきだった。
「なぁなぁ、コレ何だ?」
「あ? 日焼け止め成分が入ったワックススプレー」
「へぇ。じゃあ、コレは?」
「オイルトリートメントのミスト」
「おぉ、いいな! なぁ、このふたつ貸してくれよ」
「タタタ、タッタ、ターンッ」と青い猫型ロボットがポケットから道具を取り出す時のテーマを口にしながら武田がミストを手に取って。
シュッシュッシュッ。
シュッシュッシュッ。
シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッ。
ん? このリズム、どっかで……。
「お、コレいいな! もっかい振ってみよう」
シュッシュッシュッ。
シュッシュッシュッ。
シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッ。
また、同じリズムだ。
右サイドに3回。左サイドに3回。頭頂部から後頭部全体に7回。
「ふはっ! 武田くん! ソレ、三三七拍子っ! あははっ、おかしいっ! あははははっ!」
「僕も顔洗う」と後ろについて来てた智穂が爆笑した。そうだ、三三七拍子だ!
つか、智穂が武田にめちゃめちゃイイ笑顔を向けてる。
すげぇ、ショック!
なんてこった! ついでにパンナコッタ、肩凝った!
なのに!
「ぶははははっ!」
智穂以上に爆笑してどーする、俺っ!
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