キミに贈る、魔法の言葉。

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あれ? 武田? まさか……え? つーことは、つまり。 「……げ、げ、げ、現実っ!?」 やっべ! やべーよ! 「たけ、たけっ……たけけけっ!」 「――――雪夜?」 ――ビクッ 「……あ」 「雪夜。身体、痛くない?」 「え、身体?」 「そう。こんなとこで寝たら駄目だよ? しかも薄手の掛け物1枚だけなんて。風邪ひいたらどうすんの? 雪夜の仕事は、身体が資本でしょ? ちゃんとプロとしてやってく気、あるの? しっかりしなよ」 「……はい、すみません」 うわ、起き抜けの淡々としたテンションで叱られちまった。 普段おっとりしてる智穂だけに、これ、マジなヤツだ。 けど、眉根を寄せてるカオも可愛いんだよなぁ。 羽毛布団にあごまで埋まってるトコもさ。 庇護欲をそそるっつーか、見てるだけで、何かこうムズムズしてきちまうんだよな。 ほんと可愛い。 でもさ、怒ってても可愛いけどさ。 さっきみたいなカオを見たいんだよ、俺。 俺の好きな。大好きな、智穂の表情を。 そんなことを思いながら、むくりと起き出した智穂が羽毛布団をたたむのを手伝って。 「コレ、俺が寒いと思って掛けてくれたんだろ? ありがとう。おかげで朝まで熟睡出来たよ」 おまけに、智穂が一緒に寝てくれてたしな! まぁ、ソコんところをもっとしっかり味わいたかったけど、仕方ない。 でも、最高の気分だよ、と表したくて、伝えたくて。 めいっぱいの笑顔を向けてみたんだ。 「あ……や、別に。雪夜に風邪ひかれたら、僕が困る……僕だって大事な実習の最中なんだから」 けど、返ってきたのはガチガチに強張った硬い表情。 そして、それすらすぐに隠してしまう、俺を避けるように横を向く仕草。 ……やっぱり、か? 何で、笑ってくれないんだろう。俺、ウザいか? なぁ、どうすればいい? どうすれば、またあの可愛いカオを見せてくれるんだ? 寝てる時はあんなに可愛かったのに。 起きたら、現実の俺を見たら、そんなのも引っ込んじまうのか? ……や、違う。こんなこと考えてたら駄目だ。 俺のいいところは、ポジティブで諦めないところじゃないか。 なんせ、10年も男の智穂を好きなんだぜ? 報われないかも、だけど。でも―― 智穂の可愛いカオは、俺が必ず取り戻すっ!
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