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私には2人の幼馴染がいる。瞬(シュン)とマリモだ。マリモは本名ではない。本名は麻里子(マリコ)だ。ただ彼女があまりに容姿端麗頭脳明晰だったので、せめてあだ名くらいマヌケなものにしたかったのだ。
しかし彼女は私がマリモ! と呼ぶと「なぁに? 千絵(チエ)ちゃん」と無邪気に嬉しそうに笑う。私の心中の闇などまるで見えないようだった。
そしてマリモが笑うたびに瞬が頬を赤くしてぼうっとのぼせるものだから、私はますますマリモが憎らしくてたまらないのだ。
私たち3人は物心ついた頃からずっと一緒だった。マリモは小さい時からたいそう整った大人のような顔をしていた。幼稚園から高校までずっと一緒だった私は、つねづね彼女の美の引き立て役だった。
同じ幼馴染みの瞬ですらもずっとマリモのことが好きだったし、マリモも口にすらしなかったが瞬のことが好きだった。
(それなのに……)
大きな鏡の中の、やたら華美なウェディングドレスを身にまとったそばかすだらけの不美人を見て私はため息をついた。
今日、私は瞬と結婚する。
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