ー前語り「不穏」・少女ー

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ー前語り「不穏」・少女ー

 毎日下校中の中学生を見つめる中に私は無理した顔で笑っている女の子を追うようになった。日に日にその女の子の笑顔は疲れて、沈んでいっている様に見えた。  私に一言、ごめんね、とだけ言った紫苑とはしばらく会っていない。それでも私はいいと思った。  誰かと居る事の出来る紫苑と一緒に居たら、私は彼女に理不尽な八つ当たりをしてしまいそうだった。この間、紫苑に言った言葉だって八つ当たりだったと思う。紫苑を庇う村正の存在が羨ましかった。一人きりで居る私が、やるせなくなった。そんな生々しい言葉で傷つけてしまうなら、私は一人きりでいい。  静かに、誰にも気付かれずに中学生の女の子達の楽しげな姿を見る。  今までの私に戻っただけだ。  ただ、無理をして笑う女の子の姿が私の心に刺さる。その子を見つけてしまうと、私は心が痛む。どうしてだか解らないけれど、笑っているのに陰鬱な感じがした。真逆な感じをどうして私が感じるのか、知らない。
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