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「告白されたから、付き合うことにした!」
夏樹からそんな報告を受けて、私はなんて答えたか覚えていない。隣でもっちゃんが、よかったねえ、頑張ってねえと言ったのだけなんでかはっきり覚えてる。
気が付いたら家に帰りついてて、部屋のベッドに座り、1人ぼろぼろと涙をこぼしていた。抱きしめた枕に、水滴が吸い込まれていく。
告白されたから付き合うんだって。へえ。へえ?好きでもないのに?よく知りもしないのに?3組の加瀬ってそもそも誰?私、顔も浮かばないんだけど?どんな人?
頭の中をぐるぐると嫌な言葉がめぐってる。こんな言葉たちを直接ぶつけたんじゃなければいいんだけど。本当によく思い出せなくて、困る。
ああでも、言っちゃっても別によかったか。全部本当のこと。
でも、でも。傷つけたいわけじゃない。ただ、悲しいだけだ。
もう自分でもよくわからない。私はベッドに転がって、天井を見上げる。視界は涙でぼやけていく。
ちゃんと、わかっていたつもりだった。
でも、駄目だ。いくらわかっていても、駄目なものは駄目なんだ。
「誰か助けて」
息ができないような気がして、思わずつぶやいた。1人きりの部屋、その声は誰にも聞かれずに消えた。
私のこの気持ちも、こんな風に簡単に消えてしまえばいいのに。
わかってたのにな。ちゃんと、わかってたのに。
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