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「おい眼鏡」 「はい眼鏡」 「喧嘩売ってるなら諦めたほうがいい。確実に勝つからね。きみが」 「当然です」 「うわー」 「何度も言いますけれどカフェインがたくさん含まれた紅茶は中枢神経を刺激するので薬との相性がよくな」 「よくないのねはいはい」  奪い返したアールグレイで素早く錠剤を飲みくだした。彼女がぷくぅと頬を膨らませる。 木が吐息を零すような、やわらかな音で頭上の葉は揺れ動き、彼女の白い肌にかかっていた木陰も同時に揺れた。ほんとうに風のよい日だった。 なんだかどちらからともなく溜め息をついた。 「こんなもの飲むだけでメンテナンスと修理ができるなんて。人間には便利な面もあると認めざるを得ませんね」  人工の長いまつげが震えて人工の瞬きを繰り返した。憂いを帯びた視線も口もとも人工的で言葉にはなんの意味も無い。 タイトなスカートからのびる引き締まった脚も、丁寧にマニキュアが塗られた薄桃色の爪も、どれだけ自然に見えようともぼくたちには意味が無い。彼女が刹那、まぶしそうに目を細めた。 ぼくはぽかんと見とれた。
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