第二話

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「獅子原!おはよう!」 聞きなれない声に振り向くと、見知らぬ男が笑顔で挨拶をしてきた。 ……誰だ、こいつ。なんで俺の名前を知ってるんだ。 俺が不信感を抱いたまま、訝しげに見ているとそいつはニコニコ微笑みながら、不思議そうに首を傾げた。 いや、傾げたいのは俺の方だ。 「…あっ、もしかしてこんな風に話しかけられるの嫌だったか?ごめんな」 申し訳なさそうに眉を下げながら言う男。 いや、話しかけられる話しかけられない以前に……。 「……お前、誰だよ」 顔をしかめながら言うと、そいつはきょとんとした表情を浮かべた。 「誰って、昨日言わなかったっけ?俺の名前は塚本浚だって」 昨日……つまり、俺の身体に入っていた結香、あいつが話したと言うことか。 ……面倒なことしやがって…。 そのまま無視するわけにもいかず、話を合わせることにした。 「……あぁ、そういえばそうだったな。それで、俺に何のようだ」 「特に用は無かったんだけどさ、獅子原見つけたから声かけただけだよ」 何がそんなに楽しいのか、笑顔で言う塚本。 俺に挨拶をしてくるやつなんてほとんどいない。 大抵、俺の見た目に怖がって逃げていくからだ。 それなのに、普通に話しかけてきた塚本。 ……あいつは俺の身体で一体何したんだよ…。 「あ、今から教室に行くんだよな?途中まで一緒に行かないか?」 「別にいいが……」 断る理由がないため、そう返事をすると塚本は嬉しそうに笑った。 「獅子原ってクラスどこだっけ?」 「2-C」 「あー、ちょっと離れてるな…。あ、俺は2-A」 それから、ほぼ一方的に話しかけてくる塚本に適当に相づちをうちながら、俺たちは教室へ向かった。
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