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「獅子原!おはよう!」
聞きなれない声に振り向くと、見知らぬ男が笑顔で挨拶をしてきた。
……誰だ、こいつ。なんで俺の名前を知ってるんだ。
俺が不信感を抱いたまま、訝しげに見ているとそいつはニコニコ微笑みながら、不思議そうに首を傾げた。
いや、傾げたいのは俺の方だ。
「…あっ、もしかしてこんな風に話しかけられるの嫌だったか?ごめんな」
申し訳なさそうに眉を下げながら言う男。
いや、話しかけられる話しかけられない以前に……。
「……お前、誰だよ」
顔をしかめながら言うと、そいつはきょとんとした表情を浮かべた。
「誰って、昨日言わなかったっけ?俺の名前は塚本浚だって」
昨日……つまり、俺の身体に入っていた結香、あいつが話したと言うことか。
……面倒なことしやがって…。
そのまま無視するわけにもいかず、話を合わせることにした。
「……あぁ、そういえばそうだったな。それで、俺に何のようだ」
「特に用は無かったんだけどさ、獅子原見つけたから声かけただけだよ」
何がそんなに楽しいのか、笑顔で言う塚本。
俺に挨拶をしてくるやつなんてほとんどいない。
大抵、俺の見た目に怖がって逃げていくからだ。
それなのに、普通に話しかけてきた塚本。
……あいつは俺の身体で一体何したんだよ…。
「あ、今から教室に行くんだよな?途中まで一緒に行かないか?」
「別にいいが……」
断る理由がないため、そう返事をすると塚本は嬉しそうに笑った。
「獅子原ってクラスどこだっけ?」
「2-C」
「あー、ちょっと離れてるな…。あ、俺は2-A」
それから、ほぼ一方的に話しかけてくる塚本に適当に相づちをうちながら、俺たちは教室へ向かった。
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