第二話

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「ちょっ、獅子ちゃん!一体どんな心境の変化があったの!?」 教室に入ると同時にクラスメイトの一人が勢いよく話しかけてきた。 クラスメイトの一人と言っても、知り合いではあるが。 「いきなり何だ、御幸。あと、獅子ちゃんって呼ぶな」 御幸雄大。俺の見た目に怖じけず、積極的に話しかけてくるこの学園では珍しい奴。 俺はあまり関わりたくないんだが、俺が何度言っても付きまとってくる。 あいつは友達だとか言ってくるが、断じて違う。 「良いじゃん、獅子ちゃん可愛いじゃん!……じゃなくて!ホントどうしたの!?あれだけ関わりたくないって言ってたのに!」 「だから何のことだよ」 「アレだよ、アレ!風紀委員のスカウトを引き受けたって話!!」 その言葉を聞いた瞬間、俺は言葉を失った。 ……今、こいつは何て言った? 風紀委員?俺が……? 「…………あいつ、絶対許さねぇ…」 「獅子ちゃんが入るんなら俺も入りたいー!いや、入るんじゃなくて、影からこっそり覗いてたい!獅子ちゃん総受けが見たいー!!不良受け見たいー!!」 余計なことしかしてないのか、あいつは……。 風紀委員はなにかとめんどうだから、俺は何度頼まれても断ってきたのに……。 この学園の風紀委員は少し変わっている。 通常なら、風紀委員は他の委員会のようにクラスで話し合って決めるだろう。 少なくとも俺の中学の頃はそうだった。 だが、ここでは毎年、入学したての一年から数名を風紀委員がスカウトする。 主にスカウトされるのは、喧嘩が強い不良や、真面目そうな奴だ。 もちろん、スカウトを断ることだってできる。 俺も、入学して数日後にはスカウトされた。 俺の見た目が不良みたいだからだろう。 したくてこんな格好をしてる訳じゃないが。 だが、俺は今までの約一ヶ月間、スカウトを断り続けていた。 何故なら、風紀委員は生徒会と関わることが多いからだ。
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