第1章

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「存じ上げてます」 三浦は合いの手を入れる。 「もしうちにポストを用意したら、君は何をしてくれるのかな。経歴も間違いないし、紹介状も確かな筋からのものだし。頼みたい仕事がないわけでもない、でもねえ」武は言う。 「まだ僕の裁量は通るからね。だから問うけど。うちは、リーダーシップを取れる人材が欲しいの。我が校だけでなく、世間に、持てる力量を余さず発揮して還元できるリーダーシップ。どう、三浦君」 「自らを律して精進する。学者なら皆覚えがあります」 「それだけじゃね。次の学長の横山君はともかく、僕はつまらないと思うんだよねえ」 「はあ」 「人事は、君さえよければ引き受けるといってる。ポストは用意できると」 「だから私はここにいるんですけど」 「ブチブチごねてるのは僕なの」 えっ? えっ。 ええっ? 三浦以下三名は同時に武を見る。 「武先生が? 何故です」 「すでに宗像君が来るの決まってるし、尾上君も昇格する。似通った人材はこれ以上いらない、ってのが本音だね」 「彼らが良くて、私はだめな理由をお聞かせ下さい」 「ダメとは言い切ってないよ」 「けれど先生は今――」 「僕の目にはね、君が我が校を志願する、必然的なものが見えてこない。三浦君、人は感情で動く生き物だ。あいつと仕事してみよう、任せてみようと決める動機は、実績よりもっとウェットな部分が占めるものだよ」
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