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私は、例の女の家の様子を伺っていた。
その家は、桜並木が綺麗に植わった閑静な住宅街の一角にあった。
まるで他人を拒絶するかのような、がっちりと閉ざされた門の前に私は立ち尽くした。
敵はなかなか手強そうだ……
しかし、ここでひるんではいけない、と思った。
私は、近くの植え込みのかげに隠れて、女が帰って来るのを待った。
5、6時間経っただろうか。
辛抱強く待っていると、ついにその女がやってきた。
私は、その女の前に飛び出した。
「大嶋さんにつきまとうの、やめろよ! 大嶋さんはいい迷惑なんだよ!!
男とみると色目使いやがって、この淫乱女!!」
私が女の胸ぐらをつかんで、ひっぱたこうとした時、その女はとっさによけた。
その瞬間、力いっぱい向かっていった私はよろけてつまづいてしまった。
その隙に、その女はさっと門の向こうに逃げ込んだ。
私は、その女の背中に
「今度つきまとったらタダじゃすまねーからな! わかってんだろうな!!」
と思いつく限りの怒号を浴びせた。
その女は振り返って、怯えたような目で私の顔を見る。
「……はい。」
ガタガタと震えながら小さく頷いていた。
これだけ脅せば、もうつきまとってくることはないだろう……。
取り逃がしたのは残念だったが、上々の首尾に私は満足して家に帰った。
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