里見義康、立つ!

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 里見義康はかつて秀吉の小田原城攻めでの遅参を咎められ、六十二万石もあった領地を没収され四万石に減らされた。  その後、秀吉にその才を高く評価され、九万二千石に高直しされる。その際には羽柴性を下賜され、安房守・侍従に叙任されている。  秀吉は義康の野心が好きであった。また強力な水軍を所持している面も評価した。触れ合ううちに武家としての作法も優れており、心技体の揃った武将であると褒め称えた。  当初、義康は秀吉のことを「出来星大名」と侮っていた。しかし、実際に会ってみると、その器量に我が遠く及ばないことを思い知らされる。  房州という中央から距離のある地で、領土の拡大に固執していた時、秀吉は日ノ本全体を眺めていたのだ。  いつしか、減封された悔しさや侮蔑の心は消え、秀吉に強く惹かれていくのである。
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