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「君を僕の実験場に招待するよ」
暗闇のなかを歩きだす。
シオンが最初にレラをつれていったのは、死体安置所だ。病院のそれというよりは、モルグ。死体を冷凍保存できるボックスが、いくつもならんでいる。
「ここにね。昔の僕が眠ってるんだ」
シオンは首にクサリでさげたカギを、服の下から、ひっぱりだす。ボックスのひとつを、そのカギであけた。
すっと、コンテナがひきだされる。
なかに凍りづけの死体があった。
僕の白雪姫ーー
レラは知った。
シオンの言う白雪姫とは、誰のことをさしているのかを。
死んだまま眠る絶世の美女。
それは、かつてのシオン自身のことだ。
今のシオンも、とても美しい青年だ。でも、その死体は、この世のものとは思えない。女とも男とも違う。しいていえば、その中間。
妖精とか、精霊とか、そういうたぐいの何かのような。
死体ではあるけれど。いや、死体だからこそ。この世のことわりから外れた美を体現している。
「これ……シオン?」
「そうだよ」
「きれい」
「きれいだよね」
「顔はシオンだよね。でも、少し違う」
「これは両性具有の僕だからね」
「今のシオンは?」
「僕は単性XYの僕」
「死んだの? 以前のシオンは?」
「そう。死んだ。実験を成功させるために、みずから、このなかに入って眠りについた。次に目覚めたときは、計画どおり、この体のなかだった」
「そんなことができるの?」
言ってから、レラはハッとする。
シオンはクローンの研究をしていた。遺伝子操作によるクローン再生の研究を。
それに、魂の存在の証明……あるいは、死者の魂の蘇りについて。
「クローンなの……? 今の体は、この死んだシオンの遺伝子を組みかえたクローンなのね?」
「そう。母体が必要だったから、ユカさんに協力してもらった。単性にしたのは、僕の自意識では男性だったからなんだけど」
「でも、それだけじゃ、記憶は残らない……」
「知ってる? 赤ん坊のときには、人は前世の記憶を残してるんだ。でも、その記憶は、物心がつくころには消えてしまう。三、四さいまでだよね。
じゃあ、もし、その期間に、いっきに大人になることができれば、どうだろう? 前世の記憶を失う前に」
思いあたる。
レラのなかで急速に成長し、消えていった胎児。
それに、レラ自身も一歳のときには大人のように、しゃべったという。
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