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水族館の中を早足に歩き回っている私は、他の人たちにはどういうふうに見えているんだろう。
深海コーナーでふよふよ漂っていたクラゲが、不意に泳ぐのをやめて水槽の底に落ちていく。他のクラゲに比べてきのこ傘の小さいそいつは、どうやら赤ちゃんクラゲらしい。時おり疲れたように底へ降りては、また水中へ飛び出していく。
私はそこで、歩くのをやめてしまった。
家族連れや恋人たちが密やかな感嘆をもらしながら、真っ暗で狭い通路を進んでいく。となりにいるのが誰なのかわからないから、手を繋いでいる親子も多い。足元のライトと水槽を照らす明かりを頼りにゆっくりゆっくり歩いていた。
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