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ケラケラと笑いながら自嘲しているけど、不思議と悲壮感はない。
色褪せたチェックシャツに、着古してすっかりくたびれたジーパン。数年前は白かったはずの靴は今じゃ茶色に変化している。
それでも風間くんは風間くんだ。高校生のときから変わらない、一途にお笑いが好きな風間くん。
私はしゃがんでいた状態から膝に手を置いて立ち上がり、風間くんの隣に座る。
目を合わせなくて良い分、素直な言葉がするりと出て来そうな気がした。
「ありがとう。」
風間くんがこちらを向く気配を感じたけど、私は夜空を泳ぐ薄い雲から視線を外さない。目が合った瞬間、照れ臭さに負けてしまうだろうから。
「私、『俺が夢を諦めたらお前も諦めろ』って言葉に救われた。風間くんが、私を息苦しい世界から助け出してくれた。」
この人がいなかったら、私は色のない世界を抜け殻のように漂っていたことだろう。夢を抱いていたことすらも、いつしか忘れて。
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