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そっか、と呟く風間くんの声は穏やかで。きっと今、彼は優しい表情をしているんだろうな、と思った。
「それじゃ、今度は俺の番だな。意地でも売れてやる。」
そして風間くんは、あのさ、と話を続けた。
「俺が賞レースで優勝して、爆発的に売れて、安定してテレビに出られるようになって。そんで坂井田さんと肩を並べるくらいの高みに立てたら、付き合ってよ。」
普段と同じ調子でさらりと言われたその言葉。うっかり流してしまいそうになった。
耳から通り抜けるギリギリで、言葉の端っこを掴んで脳内に押し戻す。
それって、まさか告白?
それともどこかへ行くお誘い?
「『分かった、どこに付いていけばいいの?』なんて野暮なこと、聞くなよ。」
モノマネの腕前は相変わらずの安定感。ねっとりとした言い方だとか茶目っ気たっぷりの声だとか、若干『私』というものが誇張されてはいるけど、別に嫌じゃない。
だから私も、私のモノマネをする風間くんのモノマネで、茶目っ気たっぷりの声を作ってみせた。
「待ってる。」
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