プロローグ

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車の助手席から窓の外を眺める。 梅雨に入ってから、待ってましたとばかりに降り続く雨。 「長崎は今日も雨……か」 「梅雨やけん全国的に雨やろ?福岡も近かけん、あんま変わらんとじゃ?」 独り言のつもりで呟いた私の言葉に、返って来た彼からの言葉はごく当たり前のことで、返事をする気にもなれなかった。 「雨のせいか結構道の混んどる。JRの時間までどんくらい?間に合うやろうけど。駐車場空いとればよかけどな」 やっぱり、駅まで送ってくれるだけじゃなくてホームまで着いて来るつもりなんだ。 「構内で降ろしてくれればよかよ。そっからは1人で行くけん」 「なんば言いよっと。明日美のことやけん間違えて"かもめ"に乗るかもしれんし」 な、なんで? 一瞬動揺してビクついてしまったけど。 ただの冗談だと気付いてホッとした。 「もう!友也はいつまでも私ば子ども扱いするとやけん。もう立派な大人だから間違えたりしませんよーだ!」 こうやって軽口を叩きあうのも、これで最後なんだろうな……。 そう思うとまた胸がしくしくと痛みだした。
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