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「__わかりました。そのような事情なら私が喜んで承ります」
憲兵さんと話がついたらしいおじーさん神父が、アルくんと俺を視界にしれながら近付いてきた。
「随分と可愛らしい子ですね。
私がここの教会の神父を勤めています。
今から貴方に、神から名前が言い渡されます。
__なので、そんなに怖がらなくてもいいのですよ」
「ひっ」
自然と声が漏れる。
いや、不可抗力だ。
あれ?自分は何をしているんだ?
一瞬の内に頭が真っ白になった。
このおじーさん神父は何を言っている?
____教会に入ってからずっとアルくんの腕を強く掴み、
身を縮め、
この神父が近づいてくるたびにアルくんに身を寄せて、
そして、
神父が、
怖がらなくてもいいといいながら、
手を伸ばして、
俺の頭に、
ああ、このくらいの年の人は無理なんだ。
無意味に、理不尽に殴りかかって俺で憂さ晴らしをしていた3番目の父親によく似ているからだ。
自然と体に力が入ってしまっていたんだ。
この神父が手を挙げた時、殴られると思った。
まず、神父が目に入った時、汚い罵詈雑言を怒鳴り散らされると思った。
アルくんに掴みにいったのも、
アルくんに似た茶髪のクラスメイトが、俺をゴミとでも勘違いしているような視線だけを向け、俺がボロ雑巾のように教室の床に転がっていた時に、無言で俺を教室の隅に移動させてくれるような人だった。
だから、殴られて痛い思いをするよりもアルくんのほうが助かると思った。
なんだ、あとから考えればすぐにまとまるじゃないか。
結局俺は、元いた世界を引きずっているんだ。
元いた世界から逃げられないんだ。
エクスさんや、たわわお姉さん。マイナさんにダルさん、カジナールさんは面影の重なる人がいなかったから大丈夫だったのか。
アルくんに至っては、ただ髪の毛の色だけ。
でも神父、オメーはダメだったんだ。
今でも、頭ではここは元いた世界ではないって理解してる反面
____また同じような日々に戻るかもしれないと恐怖している自分がいる。
ツギハギだ。アベコベだ。
もう自分でも訳がわかんなくなってきた。
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