第1章

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 そういえば、このあいだの私の誕生日も最悪だった。  あれは彼が私の誕生日に、洋服をプレゼントしてくれることになった。そこで二人一緒に、とあるファッションブランドのお店に出掛けた。  私はその店でかわいいシャツを見つけた。そこで私は、そのシャツの色違いを彼に選んでもらうことにした。デザインは同じだけど色の違う白いシャツと黒いシャツ。私は彼に「どっちがいいかな?」と訊いてみた。  そのとき彼は、「白いほう」と答えた。  私は彼の答えを聞いてビックリした。付き合って三年になるし、今では同棲もしている。なのに、なんで彼女の洋服の趣味が分からないのか不思議でならない。  私の答えは、黒いほうだった。彼も私の趣味を知っていて、「黒いほう」と答えてくれるものだと思ってた。  私は彼に、「いや、普通は黒でしょ」と言ってやった。すると彼は、「決まってるんだったら俺に訊くなよ」とキレぎみで返してきた。私たちはその店で小さな言い争いをした。  「私だったら黒を選ぶって、なんで分からないの?」と私が言うと、「俺は、お前がいつも同じような色の服を買ってるから、違うのを選んでやったんだよ」と彼が言う。そして続けざまに「もう面倒くさいから、その二枚買ってやるから」と言い放った。  結局、その日は何も買わずに帰った。店から帰ってきた私たちは、いっさい口を利くことはしなかった。私の誕生日だというのに。  私は黒いシャツが欲しかった訳ではない。私が欲しかったのは、彼と意見の一致した黒いシャツなのだ。  私たちの喧嘩はしばらく続いたが、後日彼が黒いシャツを買ってきてプレゼントしてくれたので、なんとなく仲直りはした。だけど私は、まだその黒いシャツに袖を通していない。  電車が最寄り駅に到着した。  私はため息を吐きながら電車から降りた。これから先も彼と一緒にやっていけるのだろうか?ましてや、どうしても結婚のことを考えさせられる今日、私の胸の中は不安で溢れていく。  駅から外に出ると、さらに私に追い打ちをかけるようなショックな出来事が待っていた。  雨だ。雨が降っていた。  私はちゃんと天気予報を観てきた。昨夜のテレビでも、今朝のテレビでも、雨が降るなんてひと言も言っていなかったのに。もちろんインターネットの天気予報も観た。降水確率0%だった。
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