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「いてっ」
「あ、ゴメン。痛かった? もう少しだから」
消毒液を染み込ませた脱脂綿が頬の傷に何度か触れていった後、ペタリとカットバンが貼られた。
「はい、いいよ」
以前は喧嘩ばかりだった俺の手当をよくしていたから、小太郎は手慣れている。
ただ今回違うのは。
「お前もだろ。俺がやってやる」
小太郎も怪我だらけだってことだ。
あと、手当の場所が俺の部屋じゃなくて、小太郎の部屋ってこと。
いつも小太郎が俺の部屋に来てたから、小太郎の部屋に俺が来るのは久しぶりだ。
「俺はいいよ」
「よくねえだろ。消毒液よこせ」
「だって冬夜に頼んだらすごく痛そ「あ゛?」……イエ、オネガイシマス」
消毒液が入った瓶を逆さにして脱脂綿を濡らす。
勢いが良すぎて床まで滴ったそれを見た小太郎の頬が、引きつった。
「あの、やっぱり自分で…いだーーっ!!!」
口端の傷にグリグリと脱脂綿を押しつけると、小太郎は一気に涙目になった。
逃げようとする頭を、片手で鷲掴む。
「いたいいたいいたいっっ、指食い込んでるっっ」
今日はおじさんとおばさん、何時頃に帰ってくるんだ?」
「俺の悲鳴、無視っ!?」
お、額も切ってる。
「いだーっっ、って、ちょちょ、消毒液が額から目に垂れてきてるっっ」
「たっぷり染み込ませたからな」
下から手が伸びてきたかと思うと、ガッと手首を掴まれて剥がされた。
「何すんだよ」
「じこぼーえい。自分でやるから座っててください」
「せっかく恋人らしくしてやろうと思ったのに」
小太郎の顔が一気に真っ赤になった。
かと思ったら、そのまま蕩けた。
ヘラヘラと締まりのない笑顔を浮かべながら俺の手を離す。
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