驥服塩車(キフクエンシャ)

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驥服塩車(キフクエンシャ)

「ねー、暇だと思わない?」 「左様でございますか」 突然投げかけられた主の一言に、作業の手を止めて言葉を返せば、お気に入りの赤いソファーにだらしなく寝そべっている人物が、天井に描かれている星々を眺めながら、大きな欠伸を1つ。 「いっそこれ、壊しちゃおうか」 「作り直すのに大変な手間と時間がかかるかと存じますが……お望みとあらば」 持っていたハサミを手身近なテーブルに置き、近くにあった用具入れの中から、天井を掃く竹ぼうきを取り出して近づけば、こちらの本気が伝わったのか、ソファーから体を起こして手を振る。 「冗談だって!じょーだん!もー、君はすぐ本気にするんだから」 この場合、その台詞はまんま目の前の張本人に言いたいと思ったが、表情に出さずに一礼すると、竹ぼうきを元の位置に戻す。 後ろからは「真面目なんだから」と茶化すような言葉が投げかけられたが、それを言うならば、そちらが不真面目なだけだと出かかりそうになって止める。言ってしまえば、面倒になるのは火を見るよりも明らかだ。 確かに創るのは非常に時間がかかるし、一度創り始めて大きな形を成してしまうと、後は勝手に創られていくものだから思い通りにならない。同じものは2つとして創る事が出来ない。 それでも創っている時が1番楽しい時なんだろうか。天井一杯に創った星を眺めながら、時折その内の1つを壊したり、星の中に小さなおもちゃを創ったりするのが、ここ最近の主の1番のお気に入りの遊びであり、それを行っている内は非常に静かでこちらも仕事がはかどるものだから、主としても私自身としても、さっき言った言葉はあながち面倒ごとだけというものではない。
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