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「あの。乾課長、」
「佐藤くんは僕が慰めておきますから大丈夫です」
一歩前に出たゆず。
俺の時には離した手は、未だ彼の手の中に。
「今までどうもありがとう。もし分からない事があったら佐藤くんに聞いて下さい。彼とは今後も連絡を取るつもりですので」
「え」と口を開けた彼女はそこで足を止める。
「これまで君がいてくれて助かりました。後の事はよろしく頼みますね。お疲れ様でした。……では」
環ちゃんとどうぞお幸せに。
なんて言葉は口が裂けても言えなかったが、最後までゆずが恋をした乾課長らしくいられたことには、さすが俺。と褒めてやりたい。
最近彼女がそうしていたように、視線が合う前にスッ……と目を逸らす。
だから、今、彼女がどんな表情をしているのかは分からないが
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