彼女が僕に、伸ばしてくれた手

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そんな事を話している内に、遠くの方から彼女が乗るバスがこっちの方へ近付いてくるのが見えた。 すると彼女は、 「あーあ…バス来ちゃった。……もうちょっと、一緒にいたかったな」 …と、後半の言葉は俺に聞こえるか聞こえないかの声でボソッと呟いた。 結果、耳のいい俺には聞こえてしまったわけだけど。 「……つか、あんたさ、何でいちいちそういう……」 そこで俺はグッと言葉を詰まらせた。 『何でいちいちそういう可愛い事言っちゃうわけ?』 と、思わず口から滑り出しそうになったから。 「え?」 「…いや、だから…」 「あ…ごめん、やっぱり迷惑だったよね。バス、一緒に待ってくれてありがとう…」 「迷惑だなんて思ってない」 拒絶したはずだった。 その気持ちは受け取れないと。 ここで、嘘でも迷惑だと言ってやれば、隣で俺を見上げる彼女も諦めがつくかもしれない。 そう、頭ではわかっているのに。 咄嗟に口から出た言葉は、頭で考えたものじゃなく、ただの本心だった。
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