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「……鷲尾くんだって、私と同じ気持ちのはずだよ…」
「だから、何でそう言いきれんの?」
イライラする。
何もかも。
自分に対して恋愛感情を抱いているクラスメートに気付く素振りのない彼女に。
彼女を傷つけるとわかっていながら、責める言葉を止められない自分に。
今にも泣きそうな顔を、見たいわけじゃないのに。
「…っ、だって…」
「それより、どうする?今日これから。……帰るなら、送っていくけど」
「………」
今日はダメだと思った。
これ以上一緒にいたら、更にこじれていくだけだ。
考えが凝り固まっていて、柔軟に物事を捉えられない。
泣きそうな顔を見れば見るほど、自分勝手な不満をぶつけてしまいそうで。
だから今日は、帰る方向に話を持って行く事にした。
「……送らなくていいよ。一人で帰れるから」
「………」
「私って、そんなに信用ないのかな」
「え…」
「何か、どうすれば棗くんに信じてもらえるのか、わからなくなっちゃった」
彼女は溢れる涙を零す事はなく、俺から視線を逸らしてそのまま車を降りて行った。
「……っ」
彼女を追いかける事は出来なかった。
今はどんな言葉も、無意味な気がしたから。
「……何してんだよ、俺……」
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