抱きしめて、離さないで

3/32
465人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「ごめん」 「え?」 「今日はありがとう、家に来てくれて。疲れたんじゃない?かなり」 結局お昼ご飯をご馳走になった後もお姉さんや弟さんからの質問攻めにあって話が途切れなくて、梶真家を出たときにはすっかり夜になっていた。 帰り道、車を運転しながら棗くんが私の事を気遣ってくれた。 ごめん、なんて謝らなくていいのに。 「ううん、むしろ私の方こそ連れて来てくれてありがとう!棗くんの家族に会えて嬉しかったし楽しかったよ。それに、念願のブルー達にも会えたしね」 犬はもともと好きだけど、あんなにも可愛くて堪らない存在だなんて今日初めて知った事。 「お姉さん、今度大阪観光連れて行ってくれるって」 「アイツの案内で旅行とか、俺絶対無理なんだけど。旅行が苦痛になりそう」 本当に心から嫌そうな顔をして呟く棗くんを見て、自然と笑みがこぼれた。 棗くんの家にいる間、ずっと気を張っていたからか、帰りの車の中では完全に気が緩んでいた。 きっと私、今すっごいだらしない顔して笑ってるんだろうな。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!