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多分、俺に彼女の痛みはわからない。
どれだけ苦しい思いをしてきたのか。
どんな気持ちで生きてきたのか。
全て理解するなんて、きっと無理な話だろう。
だけど、それでも。
わかりたい、と思う事が何よりも大事で重要なんじゃないだろうか。
「…あ、純!」
「っ!」
その瞬間。
眠っていた彼女の瞼がゆっくりと開いて。
大きな瞳が、俺を捉えた。
その瞳は、弱々しく揺れていた。
「……ここ…病院……?」
「そうだよ純!もう…超驚いたんだからね!霧島と私の目の前で純、倒れたんだから!」
「……そっか、私、やっぱり倒れちゃったんだ」
そう呟いた彼女は、今にも泣きそうな顔で笑った。
この表情を目にしたのは、初めてじゃない。
今までも、何度か目にしてきた。
その度に、俺の胸は何かが突き刺さったかのようにズキッと痛んだ。
彼女は親友二人と言葉を交わし、両親と会話をした後。
立ち尽くす俺に、視線を移した。
「……棗くん……」
するとそこで、部長が口を開いた。
「……俺達、ちょっとラウンジに行ってるから」
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