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目が覚めたら、瀧川の──颯真の腕の中にいた。
「っ……」
あまりにも近くに颯真の顔があって驚きながらも。
その満ち足りた寝顔に、ほろりと笑う。
(……そうま……)
声に出さずに呼んで、幸せそうな寝顔にそっと触れる。
それだけのことで身体中が軋むのは、自分の普段の運動不足がたたっているのか。
それとも、それだけ颯真の愛情が深かったと言うことなのか。
さりげなく思い浮かんだそんな恥ずかしい考えでさえ、今の自分には酷く甘くて。
本当に──幸せで満たされていた。
身体の隅々まで、瑞々しい愛しさに満たされているような気分だ。
あの頃には考えもしなかったこんな幸せを。
いつまでも、覚えていようと思った。
これから先、きっと何度でもこんな風に目覚めて幸せを噛みしめる日が来るのだろうけれど。
今日のこの日を──この、全てが満ち足りた愛しい時間を。
いつまでも忘れずにいようと、目を閉じて噛みしめる。
「…………つかさ」
どれくらい時間が経ったんだろう。いつの間にかまたウトウトしていたらしい所に、そっと自分を呼ぶ柔らかくて優しい声が聞こえて。
目を開けるよりも前に、額に触れてきた唇の優しさに。
愛しさが、弾けた気がした。
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