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くたびれたスーツを着ていて、中肉中背猫背の男はドアに寄りかかりながら教室の中をキョロキョロと見ている。
「あ、担任だ」
出てくる回数はそんなに多くはなかったが、『俺の放課後が彼女に乗っ取られかけている件』の挿し絵で見覚えがあった。
「何で担任の顔なんて知ってるんだ?」
彰が俺の顔を訝しげに見てくる。
「ええ? えっと……」
しまった。
自分のクラスをさっき知ったばかりなのに、その担任の顔が分かるというのはおかし過ぎる。
まさか前世で本の挿し絵を見て担任を知っていたなんて答えられるはずがない。
「ええっと……」
何か怪しまれない言い訳はないか。
彰が理由を求めて、じっと俺を見ている。
何かないか何かないか何かないか。
……そうだ。
あれだ!
「あー、ほら、あれだよ。掲示板に貼ってあったクラス分けの紙にさ、担任の名前が書いてあっただろ。それで分かったんだよ」
「確かに担任の名前は書いてあったが……。だが、あれだと名前しか分からないじゃないか。何で顔を見て担任だって分かったんだ?」
「それは……」
うーん。
しつこい!
しつこいぞ彰!
なおも食い下がる彰に、俺はさらなる言い訳を考える。
「えーと……。彰には言ってなかったんだけどさ。実は俺、あの担任に憧れていたからこの高校を選んだんだ」
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