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もともと芸術畑で育った彼は、自分の作品に対するプライドが高く、料金もかなりの高額である上に、広告や宣伝は勿論のこと、看板すらも掲げてもいない。
それでも全国各地からひっきりなしに彼の元へと依頼主が訪れるのは、伊織のその腕前が確かである証拠。
自分の腕一本だけで生計を成り立たせ、更には、狭い業界の中とはいえ日本一と噂されている彼は、言わば芸術家であり職人であった。
その彼が何故、暴力団幹部の死亡記事を凝視したまま固まっていたのかと言えば、当然、その人物が自分の知っている人間だったからである。
清水という男は、伊織の依頼主。
刺青というものは、一日、二日で完成するものではない。
柄やサイズの打ち合わせ。
構図を考え、下絵を描き、依頼主に確認する。
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