婚姻届の罠

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「オイ、少しは自分の力で歩けよ」 「歩いてまーす……んっ……飛んでるの間違いでしたー」 わはは、と笑いながら俺に全体重を掛けているこの女は、つい二時間ほど前に知り合ったばかりの女。 名前は雲母(キララ)ナオ。 仲良くさせてもらっている会社の先輩宅に出張土産を持参したら……、居た。 「わぉ!今時のラブホってー……モデルルームみたいなんだぁ」 「……俺の部屋だ」 「おっ?部屋にお持ち帰りぃ?やだぁ大胆」 「……捨てるぞ」 機嫌の悪い俺とは裏腹に、楽しそうにフラフラと部屋に上がり込んだ酔っ払い。 ヒールのある靴をコロンと脱ぎ捨て、壁伝いに手前の部屋に入ろうとしたのを慌てて止める。 「そこに入るな。リビングはこっちだ」 手首を掴んで引っ張ると、ふにゃりとした体で「了解でーす」と敬礼のポーズをとった。
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