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そういえば。 全く脈絡なく思い出した。 今日の茶席の床(とこ)の掛物(かけもの。掛軸のこと)は、「薫風自南来」だったな、と。 元は禅語(ぜんご:禅の教え)からの語で、禅語としてならば音読みで「くんぷんじなんらい」と読む。 漢詩風に読むなら、「薫風南より来たる」。 茶席では漢詩読みで紹介されることが多い。 文字通りの意味は、この時節には、南の方からほのかな春の香りが吹いて来るというもので、5月頃の茶席ではよく見かける語だ。 禅語的な深い解釈を抜きにしても、さわやかな情景が浮かんでくるようで、個人的にも気に入ってる語のひとつだ。 妙な符合だと思った。 薫風の制服を着た「らら」という女子が、恭敬さんと自分との間に、なんらかの風を吹かせている。 唐突にそんな思いまでよぎった。 どうやらテンションがおかしいのは恭敬さんだけではないらしい。
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