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ドアを閉めて、ため息をつく。
危なかった。
レイの頬へのキス。
あの白い吸い付くような肌に口づけただけなのに、そのそばにある、あの柔らかそうな淡いピンクの唇を奪いたくなった。
レイは気付かなかったかもしれないけれど。
気を取り直して、再び、義父の部屋へ向かう。
もう義母との話は落ち着いた頃だろう、と思い、部屋に入ると、ベッドから起き上がり、テーブルを挟んで向かい合う義父と義母の姿があった。
『レイはどうした?』
『疲れが出たようなので、部屋に戻って休んでます。』
『そうか・・・』
ホッとしたように、表情が緩む義父を見て、つい、微笑んでしまう。
『義父上、本当に、レイが大事なんですね。』
そう言いながら、私も、彼を大事に思い始めていることは、認めなくては。
『ああ。私はレオンの代わりに、あの子の将来を見守らなくては。』
先ほどまで青白かった顔の義父が、レイのことを話すときだけは、生への執着心が垣間見えた気がする。
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