一話

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念のため、実際の宗教団体とは何の関係もありません。 1 その時あの方は重病者の傍らにおりました。(聖なる奇蹟 643P)   ある年の6月、アメリカのカンザス州にある巨大なとうもろこし農家の娘アンナ・トンプソンは変わった夢を見た。 シカゴスタジアムのライトよりまぶしい光が、シミが目立ちやすいそばかす交じりの肌を優しくくすぐり、ひたすら呟く。 「求めるままに、しなさい」 くすぐりに気を取られ、あまり印象に残らなかった。 アンナは目を覚ますと体の異変に気づく。 両手に深々と杭で抉られた痕が発現していた。 痛みがなく、怖くなった彼女は父親に助けを求めようとべッドから這い出るも、水玉パジャマから見た足にも同様の痕が現れる。 父親に電話するも、母親になんとかしてもらえとすげなく返される。 事の次第を知り仰天する母親とともに町の病院へ見せに行くも、検査の結果問題なかった。 母親はもしやと思い、いつも相談にのって頂いている神父に事情を話し、アンナと会い彼女に聖痕が発現したと確信する。 そこからあれよあれよいう間に、教会内で話題になり、新聞記事になり、ニュースになり、教市国のテーナ礼拝堂でパウロ大教皇に謁見するまでになった。   
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