少年の空想と、温かな雪の日

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僕が日本に初めて来たのは、もう十数年と昔のことだ。 日本とイングランドのハーフである母は、「故郷は素晴らしい文化や技術を持っている魅力的な国なのよ」と、よく話をした。なぜかイングランド人の父も、日本が大好きで、負けじと僕や兄にたくさんの素敵な話をしてくれた。 四季が素晴らしいこと、都会も田舎も素晴らしい景色がたくさんあること、フレンチよりもお洒落な和食という文化があること、黒い髪が美しいということ、着物という洋服はかっこいいこと、変わった城がたくさんあること、あまり外国人がいないこと、刀を持てば誰でもヒーローになれること、忍者がいるということ、警察は忍者だということ、国民のほとんどは着物で生活していること、鬼がいるということ、日本のお化けはかなり恐ろしいということ。 僕ら兄弟は、日本人すら知らない「日本」をすっかり妄想した。今思えば、ほとんど父の話は適当で、僕らの創り出した「日本」は、江戸時代で止まったままだった。それらを理解する頃には、日本に来て2年は経っていたと思う。 初めて日本の首都に無事到着し、空港から車でホテルまで向かう道中、ただひたすら思っていたことがある。 「(((嘘…でしょ…)))」 通りすぎていく風景には、近代的な建築物ばかりだし、着物なんて誰一人着ていない。刀を持っている人もいなければ、忍者もいない。体を傾け、窓から空を眺めれば、建物と高速道路が空を隠してしまいそうだ。 とにかく、僕の「妄想王国日本」は入国して1時間も経たない内に崩壊した。 それでも、ホテルで出された紅茶とスコーンが、なんだか違和感こそあるけれど 、とにかく旨かったものだから、僕は日本に興味をもった。
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