第1章:浜村大輝、最大の秘密と天敵あらわる

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発端は彼女から突然告げられた言葉だった。 「別れてほしいの」  最初、浜村は耳を疑った。  クラスで一緒だった元気な彼女に、自分から告白して、受け入れてもらえて恋人になって、早半年。順風満帆にお付き合いが進んでいたと思っていたのはどうやら自分だけだったらしい。  彼女と自然な流れで、体の関係になって、数回目の今日のこと。しかも、今ちょうど愛を確かめ合ったと思ったその後、服を着替えながら彼女は浜村に言ったのだ。 (今、このタイミングで言う?)  さっきまで自分の腕にしがみついて、甘い声で啼いていたのは、まぎれもなく目の前の彼女なのに、そんなにあっさりと気持ちを翻せるものなのだろうか。 「俺、なんか傷つけるようなことした?」  月並みな台詞ではあるが、どうせ終わりになるならば、せめて理由が知りたい。自分に原因があるのなら謝りたいし、彼女に不満があるのなら、話し合いがしたい。  だって自分は彼女とこの先も一緒に歩んで生きたいと思っているからだ。  彼女は背を向けたまま、浜村の問いに答えてくれた。 「……演技だったの」 「え?どういうこと?」  振り向いた彼女は俺の顔を見るなり、ため息をついた。 「下手くそ」 「は?」 「大輝は、エッチが下手なんだもん!」 「下手?!」  頭が真っ白になった。一瞬何を言われたのか、わからなかった。  どうやら、初めて付き合った彼女に、エッチが下手という理由でフラれたらしい。  浜村大輝、高校三年のとある夏の出来事だ。 *** 「浜村主任、書類にハンコをお願いします」 「はい……あ、ここ間違ってる。宛名確認して」 「えっ?あ、本当だ!すみません」 「確認してから、持ってきてね」  浜村大輝(はまむらだいき)、二十五歳。 希望だった総務部に配属され、この会社を裏で支えて早五年。ありがたいことにこの若さで総務部主任という役職も頂き、今では五人くらいの事務職女子をまとめている。総務部に男は自分一人で、彼女たちを守っているのは、自分といっても過言ではない。  ちなみに彼女と呼べる存在はいない。女性に興味がないわけではないが、いいなと思う女性ができるたびにあの忌々しい過去を思い出す。
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