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少しでも桜庭のことを思い出させてしまうことも、許せそうにないが、聞いたのは俺だから、ぐっと嫉妬を堪えた。
だが、まさか、十年間に一度もないなんて……。
ざまあみろ、桜庭、と思う一方で、それでも未練たらたらのあいつが、ほんの、本当にほんの少しだけ、気の毒になる。
だが敵に情けは無用だ。
「ん、ごめん。これ、マジで……うれし……あ、おれ、お礼言ってない。メグ、ありがとな……」
「いいよ。ほら、こっちおいで。せっかくのバレンタインだよ。君の買ってきてくれたワイン、飲んでもいい?」
「ん……じゃあ、飲もっか……」
俺だって手ぶらでくるはずがなくて、ちゃんとプレゼントを用意していた。
チョコじゃなくてワインにしたのは、少しでも自分を大人っぽく見せたかったから。
高級な酒には疎いから、こっそりホテルのバーテンダーさんにおすすめを聞いて、値が張るのを奮発して購入したんだ。
さっきまで涙ぐんでいたメグはからりと笑顔になっているのに、今度は俺がうれしくて半泣きだなんて、情けなさすぎるよな。
全然ガキな俺だけど、早くメグに頼ってもらえるような大人になるから、俺のこと、ずっとずっと好きでいてほしい。
だってあなた以上に愛せる人には、もう絶対巡り会えないと確信しているから……。
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