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「むーちゃんさあ。宗教にやたら縁があるよね」
仏頂面したせっちゃんが迎えに来てくれて、
『宗教勧誘や物品の売買は、社内規則で禁止のはずですよね』
上司を一喝して助け出してくれた。
せっちゃんも上京して、別の会社で働いている。
「いつもありがとね、せっちゃん」
頭をかいて、お礼を言った。
蛙の砲丸投げや、蛇の首根っこを掴んで振り回していたお転婆娘が、普通のOLをやっているのが不思議だ。
「せっちゃん、会社で上手くいってるの?」
せっちゃんは、地元でもちょっと愉快な女の子だった。
東京の人の目には、さらに愉快に見えるらしい。
「それがさあ、どうも同期の女子では浮いてるみたいなんだよねえ」
そうだろうな。
このビルだらけの街では、せっちゃんは収まりきらないだろう。
「・・・」
2人ともつい無言になって、街を歩いていたら。
「あれ。ココ何処だろう」
どこかの路地裏に入り込んでしまった。
「むーちゃん、店がある」
「・・・」
『色判断。スピリチュアルカウンセリング承ります』
看板に書かれた文字が、目に入った。
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