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「痩せたのは、固形物を摂取してないからですよ
直ぐに元に戻ります」
折原さんが悠に微笑んだ。
瞼を落として頷く悠、身体を動かすのは一苦労なんだ。
「胸の音も綺麗ですね
……呼吸はまだまだ荒いかな
もう暫くはここで様子を見て、落ち着いたら一般へ
移りましょう」
吉川ドクターがそう言った。
「折原、血算、生化」
「はい」
見慣れた光景だった。
悠はどれくらい血を採られたんだろうか。
このひと月、見る度、見る度に採血をしていたように
思うのは、マーフィーの法則的なもんだろうか。
いや、違う。
確かに、そうだったような気がする。
「良かったですね、新城さん、ほんとに」
吉川ドクターがオレに向き直った。
「奥様もよく頑張った
明日にでもお子さんに会わせてあげてください」
悠は既にうつら、うつらと微睡みかけていた。
ハッ、とした。
このまま、眠ってしまったら、また……
「大丈夫ですよ、悠さん、まだ体力が回復されてないだけです、これから少しずつ起きている時間が長くなります」
オレの考えを読んだように、折原さんの優しい
音がそれを遮った。
「新城さんも今日はもう遅いですから帰ってお休みになってください」
「そう、ですね
そうします」
「はい、ご家族の皆様にも意識の回復、伝えてくださいね」
ああ、それと!
と、折原さんがビシ、と1本の指を立てた。
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