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「律、今日はサンキュな。助かった」
「ほら」
ビールのプルタブを開けて手渡される――って、ああ?
「律、俺まで飲んだら、どうやって帰る気だよ」
「帰らす気か?」
「……あのなぁ」
いくらなんでも初日から泊まってく気かよ。律は明日仕事――ってことは、ここから市場へ行く気か? 想像したらなんか恥ずかしくなってきた。
俺はなんとなく飲めずに缶を片手に持ったまま、から揚げをつまんで食べた。
律はまったく気にせず飲んでいる。
「……っんっ……律!」
いきなりキスされたと思ったら、口移しでビールが流し込まれた。
「ほれ、飲酒だ」
「一口で飲酒も何もあるかよ」
「じゃあ、もうちょっと飲んどくか?」
そういって、律は自分の缶をあおる。飲んどくかって口移しで飲ませるつもりだ。俺は慌てて自分の持った缶に口をつけた。
空腹と疲れた身体にビールを流し込むと、胃がカッと熱くなるような気がした。やばい、今日はすぐにまわっちまうかも。
律に渡したいものがあったんだ。酔っ払う前に――。
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